2013-05-22から1日間の記事一覧

夏目漱石『断片』

世の中は自殺をして御免蒙る程の価値のあるものにあらず。 *前文に「面白い世の中だと云う者は小供か馬鹿である。苦しい世の中だと云うのは世の中を買いかぶった者の云うことである」とある。世の中が苦しいと言い、自殺して去りたくなるのはどこか世の中に…

寺田寅彦『藤棚の蔭から』

結局はやはり「生きたい」のである。生きるための最後の手段が死だという錯覚に襲われるものと見える。

川端康成『死者の書』

死ぬのにも形容詞がいるの?

コンスタン『アドルフ』(大塚幸男 訳)

私はおのれを人の中の最大の果報者と呼び、愛と献身と永遠の尊敬とを千度も繰り返して誓いながら、彼女の足もとにひざまずいて数時間を過ごした。その語るところによれば、彼女は私から遠ざかろうとして大へん苦しんだ。そうした努力にもかかわらず、本当の…

コンスタン『アドルフ』(大塚幸男 訳)

とはいえ一種うちかちがたい臆病が私をはばんでいた。彼女のために用意した私の言葉はすべて唇の上で消えてしまうか、さもなければ前もって考えていたのとは全然ちがったものになるのであった。私は心ひそかにもがいた。わが身がいきどおろしかった。 ついに…