2013-05-25から1日間の記事一覧

伝徳川家康『東照公遺訓』

こころに望みおこらば困窮したる時を思ひ出すべし。

服部土芳『三冊子』

はいかいはなくても在(ある)べし。ただ世情に和せず、人情通ぜざれば人不調(ととのわず)。 *松尾芭蕉の言葉。ある門人(路通といわれる)について、「彼が必ず俳諧の道から離れないようにしてやって欲しい」と述べた言葉に続く。俳諧の実作はなくともよい。…

『隆達節』

夢二人、覚めてみたれば只一人、夢さへ我に肝をいらする。 *「夢二人」は、夢の中では一緒だったのに。「肝をいらする」は、心をいら立たす。

トーマス・マン『ヴェニスに死す』(実吉捷郎 訳)

かれは海というものを、深い理由から愛している。――つらい仕事をしている芸術家の、安息を求めるきもちからである。そういう芸術家は、現象のもつおごりたかぶった多様性をさけて、単純な巨大なものの胸に身をひそめようとするのだ。未組織のものへ、無際限…

トーマス・マン『ヴェニスに死す』(実吉捷郎 訳)

そして結局、自分の思想や発見は、さめて考えれば全くつまらない無用なものだとわかる、夢の中の一見巧妙なある種のヒントのようなものだ、と思った。

トーマス・マン『ヴェニスに死す』(実吉捷郎 訳)

孤独でだまりがちな者のする観察や、出会う事件は、社交的な者のそれらよりも、もうろうとしていると同時に痛切であり、かれの思想はいっそうおもくるしく、いっそう奇妙で、その上かならず一抹の哀愁を帯びているものだ。ひとつのまなざし、ひとつの笑い、…