2015-01-18から1日間の記事一覧

尾崎放哉

咳をしても一人

石川啄木

高山(たかやま)のいただきに登り なにがなしに帽子をふりて 下(くだ)り来しかな

佐藤春夫「海辺の恋」

こぼれ松葉をかきあつめ/をとめのごとき君なりき、 こぼれ松葉に火をはなち/わらべのごときわれなりき。 わらべとをとめよりそひぬ/ただたまゆらの火をかこみ、 うれしくふたり手をとりぬ/かひなきことをただ夢み、 入り日のなかに立つけぶり/ありやな…

樋口一葉「にごりえ」

おい木村さん信さん寄つてお出よ、お寄りといつたら寄つても宜いではないか、又素通りで二葉やへ行く気だらう、押かけて行つて引ずつて来るからさう思ひな、ほんとにお湯なら帰りに屹度よつてお呉れよ、嘘つ吐きだから何を言ふか知れやしないと店先に立つて…

樋口一葉「たけくらべ」

廻れば大門の見返り柳いと長けれど、お歯ぐろ溝に燈火うつる三階の騒ぎも手に取る如く、明けくれなしの車の行来にはかり知られぬ全盛をうらなひて、大音寺前と名は仏くさけれど、さりとは陽気の町と住みたる人の申き、三嶋神社の角をまがりてより是れぞと見…