佐藤春夫「海辺の恋」

こぼれ松葉をかきあつめ/をとめのごとき君なりき、
こぼれ松葉に火をはなち/わらべのごときわれなりき。


わらべとをとめよりそひぬ/ただたまゆらの火をかこみ、
うれしくふたり手をとりぬ/かひなきことをただ夢み、


入り日のなかに立つけぶり/ありやなしやとただほのか、
海べのこひのはかなさは/こぼれ松葉の火なりけむ。