2015-01-22から1日間の記事一覧

前田普羅

駒ヶ嶽凍てゝ巌(いわお)を落しけり

尾上柴舟

つけ捨てし野火の烟のあか/\と見えゆく頃ぞ山は悲しき

富永太郎「秋の悲歎」

私は透明な秋の薄暮の中に墜ちる。戦慄は去つた。道路のあらゆる直線が甦る。あれらのこんもりとした貪婪な樹々さへも闇を招いてはゐない。 私はたゞ微かに煙を擧げる私のパイプによつてのみ生きる。あの、ほつそりとした白陶土製のかの女の頸に、私は千の靜…

正岡子規「病牀六尺」

○病牀六尺、これが我世界である。しかも此六尺の病牀が余には広過ぎるのである。僅に手を延ばして畳に触れる事はあるが、布団の外へ迄足を延ばして体をくつろぐ事も出来ない。甚だしい時は極端の苦痛に苦しめられて五分も一寸も体の動けない事がある。苦痛、…