2015-01-23から1日間の記事一覧

原石鼎

秋風や模様のちがふ皿二つ

斎藤茂吉

めん鶏ら砂あび居たれひつそりと剃刀研人(とぎ)は過ぎ行きにけり

八木重吉「はらへたまつてゆく かなしみ」

かなしみは しづかに たまつてくる しみじみと そして なみなみと たまりたまつてくる わたしの かなしみは ひそかに だが つよく 透きとほつて ゆく こうして わたしは 痴人のごとく さいげんもなく かなしみを たべてゐる いづくへとても ゆくところもない…

寺田寅彦「団栗」

もう何年前になるか思い出せぬが日は覚えている。暮もおし詰った二十六日の晩、妻は下女を連れて下谷摩利支天の縁日へ出掛けた。十時過ぎに帰って来て、袂からおみやげの金鍔と焼栗を出して余のノートを読んでいる机の隅へそっとのせて、便所へはいったがや…