2015-01-28から1日間の記事一覧
ゆきふるといひしばかりの人しづか
篠懸樹(ぷらたぬす)かげを行く女(こ)が眼蓋(まなぶた)に血しほいろさし夏さりにけり
お前は歌ふな お前は赤まゝの花やとんぼの羽根を歌ふな 風のさゝやきや女の髪の毛の匂ひを歌ふな すべてのひよわなもの すべてのうそうそとしたもの すべての物憂げなものを撥(はぢ)き去れ すべての風情を擯斥せよ もつぱら正直のところを 腹の足しになると…
「あなたは色気狂ひになつたのですか?―性根が抜けたんですか?―うちを忘れたんですか? お父さんが大変おこつてらツしやるのを知らないんでせう?―」 「……」僕は苦笑してゐる外なかつた。 「こんな児があつても」と、かの女は抱き児が泣き出したのをわざと…