2015-01-30から1日間の記事一覧

富田木歩

我が肩に蜘蛛の糸張る秋の暮

川田順

寧楽(なら)へいざ伎芸天女のおん目見(まみ)にながめあこがれ生き死なんかも

西脇順三郎「雨」

南風は柔い女神をもたらした。 青銅をぬらした、噴水をぬらした、 ツバメの羽と黄金の毛をぬらした、 潮をぬらし、砂をぬらし、魚をぬらした。 静かに寺院と風呂場と劇場をぬらした、 この静かな柔い女神の行列が 私の舌をぬらした。

田山花袋「田舎教師」

四里の道は長かつた。其間に青縞の市の立つ羽生の町があつた。田圃にはげんげが咲き、豪家の垣からは八重桜が散りこぼれた。赤い蹴出を出した田舎の姐さんがをり/\通つた。 羽生からは車に乗つた。母親が徹夜して縫つて呉れた木綿の三紋の羽織に新調のメリ…