2015-02-01から1日間の記事一覧

杉田久女

谺して山ほととぎすほしいまゝ

石原純

電子うごく世界のさまを想ひをれば、 黄なる書物が 我が眼に触れぬ。

伊東静雄「私は強ひられる――」

私は強ひられる この目が見る野や 雲や林間に 昔の私の恋人を歩ますることを そして死んだ父よ 空中の何処で 噴き上げられる泉の水は 区別された一滴になるのか 私と一緒に眺めよ 孤高な思索を私に伝へた人! 草食動物がするかの楽しさうな食事を

島崎藤村「家」

橋本の家の台所では昼飯の支度に忙しかつた。平素ですら男の奉公人だけでも、大番頭から小僧まで入れて、都合六人のものが口を預けて居る。そこへ東京からの客がある。家族を合せると、十三人の食ふ物は作らねばならぬ。三度々々斯の支度をするのは、主婦の…