2015-02-02から1日間の記事一覧

竹下しづの女

短夜や乳ぜり泣く児を須可捨焉乎(すてつちまおか)

三ヶ島葭子

つつしみを知らぬやからと怒りつつおのが妬をひそかにおそるる

立原道造「さびしき野辺」

いま だれかが 私に 花の名を ささやいて行つた 私の耳に 風が それを告げた 追憶の日のやうに いま だれかが しづかに 身をおこす 私のそばに もつれ飛ぶ ちひさい蝶らに 手をさしのべるやうに

鈴木三重吉「小鳥の巣」

十吉はとうと学校を休学して、十月十幾日といふ日の夜、自分の都市へ帰つて来たのであつた。 十吉は、長らく続いて困つて来た神経衰弱が、最早どんなにして見ても、死にでもするより外には堪え切れなくなつた。 最早何の抵抗の力も尽きたのである。久しい間…