2015-02-04から1日間の記事一覧

山口誓子

夏草に汽罐車の車輪来て止る

会津八一

しぐれのあめいたくなふりそ金堂のはしらのまそほ壁にながれむ

堀口大学「母の声」

母よ、 僕は尋ねる、 耳の奥に残るあなたの声を、 あなたが世に在られた最後の日、 幼い僕を呼ばれたであらうその最後の声を。 三半規管よ、 耳の奥に住む巻貝よ、 母のいまはの、その声を返せ。

長塚節「土」一五

巫女(くちよせ)は暫く手を合せて口の中で何か念じて居たが風呂敷包の儘箱へ両肘を突いて段々に諸国の神々の名を喚んで、一座に聚めるといふ意味を熟練したいひ方で調子をとつていつた。がや/\と騒いで居た家の内外は共にひつそりと成つた。「行々子(よしき…