2015-02-06から1日間の記事一覧

阿波野青畝

葛城の山懐(やまふところ)に寝釈迦かな

釈迢空

人も 馬も 道ゆきつかれ死にゝけり。 旅寝かさなるほどのかそけさ

金子光晴「洗面器」

洗面器のなかの さびしい音よ。 くれてゆく岬(タンジョン)の 雨の碇泊(とまり)。 ゆれて、 傾いて、 疲れたこころに いつまでもはなれぬひびきよ。 人の生のつづくかぎり 耳よ。おぬしは聴くべし。 洗面器のなかの 音のさびしさを。

武者小路実篤「お目出たき人」

一月二十九日の朝、丸善に行つていろ/\の本を捜した末、ムンチと云ふ人の書いた『文明と教育』と云ふ本を買つて丸善を出た。出て右に曲つて少し来て四つ角の所へ来た時、右に折れやうか、真直ぐ行かうかと思ひながら一寸と右の道を見る。二三十間先に美し…