2015-02-09から1日間の記事一覧

橋本多佳子

螢籠昏(くら)ければ揺り炎(も)えたゝす

前川佐美雄

ひじやうなる白痴の僕は自転車屋にかうもり傘を修繕にやる

大岡信「春のために」

砂浜にまどろむ春を掘りおこし おまえはそれで髪を飾る おまえは笑う 波紋のように空に散る笑いの泡立ち 海は静かに草色の陽を温めている

中勘助「銀の匙」

夜店のうちでほほづき屋は心をひくもののひとつであった。歯車のついた竹筒をぶいぶいとまはしながら 「ほほづきやーい ほほづき」 と呼ぶ。簀の子にしいたひばの葉のうへに赤、青、白、いろいろなほほづきをならべて、雫がほとほとしたたつてゐる。団扇の形…