2015-03-31から1日間の記事一覧
無礼なる妻よ毎日馬鹿げたものを食わしむ
ただ一度生れ来しなり「さくらさくら」歌ふベラフォンテも我も悲しき
「おい、地獄さ行(え)ぐんだで!」 二人はデッキの手すりに寄りかゝって、蝸牛が背のびをしたように延びて、海を抱え込んでいる函館の街を見ていた。――漁夫は指元まで吸いつくした煙草を唾と一緒に捨てた。巻煙草はおどけたように、色々にひっくりかえって、…
山椒魚は悲しんだ。 彼は彼の棲家である岩屋から外に出てみようとしたのであるが、頭が出口につかえて外に出ることができなかつたのである。今は最早、彼にとつては永遠の棲家である岩屋は、出入口のところがそんなに狭かつた。そして、ほの暗かつた。強ひて…