谷川俊太郎「ワイセツについて」

どんなエロ映画も
愛しあう夫婦ほどワイセツにはなり得ない
愛が人間のものならば
ワイセツもまた人間のものだ
ロレンスが ミラーが ロダン
ピカソが 歌麿が 万葉の歌人たちが
ワイセツを恐れたことがあったろうか
映画がワイセツなのではない
私たちがもともとワイセツなのだ
あたたかく やさしく たくましく
そしてこんなにみにくく 恥ずかしく
私たちはワイセツ
夜毎日毎ワイセツ
何はなくともワイセツ