2015-12-23から1日間の記事一覧

谷川俊太郎「ワイセツについて」

どんなエロ映画も 愛しあう夫婦ほどワイセツにはなり得ない 愛が人間のものならば ワイセツもまた人間のものだ ロレンスが ミラーが ロダンが ピカソが 歌麿が 万葉の歌人たちが ワイセツを恐れたことがあったろうか 映画がワイセツなのではない 私たちがも…

チェーホフ『かもめ』(神西清 訳)

ニーナ わたしの歩いた地面に接吻したなんて、なぜあんなことをおっしゃるの? わたしなんか、殺されても文句はないのに。(テーブルにかがみこむ)すっかり、へとへとだわ! 一息つきたいわ、一息! (首をあげて)わたしは――かもめ。……いいえ、そうじゃな…

チェーホフ『かもめ』(神西清 訳)

ニーナ むごいものだわ、生活って。

チェーホフ『かもめ』(神西清 訳)

トレープレフ (間)そう、おれはだんだんわかりかけてきたが、問題は形式が古いの新しいのということじゃなくて、形式なんか念頭におかずに人間が書く、それなんだ。魂のなかから自由に流れ出すからこそ書く、ということなんだ。

チェーホフ『かもめ』(神西清 訳)

トレープレフ (書きつづけようとして、今まで書いたところに目を走らせる)おれは口ぐせみたいに、新形式、新形式と言ってきたが、今じゃそろそろ自分が、古い型へ落ちこんでゆくような気がする。

チェーホフ『かもめ』(神西清 訳)

ソーリン わしはコースチャに、ひとつ小説の題材をやりたいよ。題は、こうつけるんだな――『なりたかった男』。つまり『ロンム・キ・ア・ヴーリュ』さ。若いころ、わたしは文学者になりたかった――が、なれなかった。弁舌さわやかになりたかった――が、わたしの…

チェーホフ『かもめ』(神西清 訳)

マーシャ みんな、ばかげたことよ。望みなき恋なんて、小説にあるだけだわ。くだらない。ただ、よせばいいのよ――甘ったれた気持になって、待てば海路の日和だかなんだか、ぽかんと何かを待っている、そんな態度をね。……心に恋が芽を出したら、摘んで捨てるま…