ベケット『ゴドーを待ちながら』(安堂信也 高橋康也 訳)

ヴラジーミル もう、わたしたちだけじゃない、夜を待つのも、ゴドーを待つのも、それから――とにかく、待つのにだ。さっきからずっと、わたしたちは、自分たちだけで全力をつくして戦ってきた。だが、それは終わった。もうこれで、あしたになったも同然だ。
エストラゴン しかし、あの二人はただ通り過ぎるだけだろう。
ポッツォ こっちだ!
ヴラジーミル すでに、時間の流れがまるでちがう。太陽は沈み、すぐ月が出る。そして、わたしたちは立ち去れる――ここから。
エストラゴン だって、ただ通り過ぎるだけだぜ。
ヴラジーミル それでじゅうぶんなのさ。