ベケット『ゴドーを待ちながら』(安堂信也 高橋康也 訳)

ポッツォ (沈黙)だが(お説教をするような手つきで)――だが、その静けさ、優しさのベールの陰に(目を空に向ける。ラッキーを除いて二人ともそれをまねる)夜は疾足(はやあし)でやってくる。(声が震えてくる)そしてわれわれに飛びかかる。(指をピシリと鳴らし)タッ! とこう(インスピレーションが消えてしまい)われわれが、考えもしなかった時にだ。(沈黙。陰鬱な声で)まず、いつもこんなぐあいだ、この淫売(ばいた)の地球の上では。