太宰治「古典風」

 なぜ生きていなければいけないのか、その問に思い悩んで居るうちは、私たち、朝の光を見ることが、出来ませぬ。そうして、私たちを苦しめて居るのは、ただ、この問ひとつに尽きているようでございます。ああ、溜息ごとに人は百歩ずつ後退する、とか。