太宰治「書簡」(酒井真人あて)

せいせい、るてん。水の流れだ。人の意志では、どうにも、うごかぬものが、この世の中にあるのだ。袖すり合うも他生の縁ということばがある。私は、あなたにかなしい縁を感じている。
「生まれて来たのが、すでにまちがいのもとであった。」
 私、この二、三日、あなたという水の流れてゆく姿を思うことしきり。
(中略)
私は、好きな男であればあるほど、じゃらじゃら馴れあうのがきらいです。あなたも、そうであろう。
 お互い、男だ。