2015-09-26から1日間の記事一覧

太宰治「書簡」(田中英光あて)

危局突破を祈る。 あせっては、いけない。まず、しずかに横臥がいちばん。

太宰治「書簡」(河盛好蔵あて)

文化と書いて、それに、文化(ハニカミ)というルビをふること、大賛成。私は優という字を考えます。これは優れるという字で、優良可なんていうし、優勝なんていうけど、でも、もう一つ読み方があるでしょう? 優しいとも読みます。そうして、この字をよく見る…

太宰治「書簡」(菊田義孝あて)

短編小説は、もっとシャッキリした鮮明な感覚の一線を引くことが大事です。 君の言葉を借りて言えば、それこそ読者への「奉仕」です。隣人への捨身です。 君は少しも「奉仕」していないし、捨てていない。「美しさ」とは、どんなものだか考えてみてください…

太宰治「書簡」(堤重久あて)

君、いまさら赤い旗振って、「われら若き兵士プロレタリアの」という歌、うたえますか。無理ですよ。自身の感覚に無理な(白々しさを感ぜしむる)行動はいっさいさけること、必ず大きい破たんを生ずる。 一、いまのジャーナリズム、大醜態なり、新型便乗とい…

太宰治「書簡」(井伏鱒二あて)

ジャーナリズムにおだてられて民主主義踊りなどする気はありません。

太宰治「書簡」(小山清あて)

貴稿は拝読いたしました。一、二箇所、貴重な描写がありました。恥じることはありません。後半、そまつなり。めちゃだ。次作を期待しています。雰囲気やにおいを意識せず、的確ということだけを心がけるといいと思います。 (それから、人間は皆、醜態のもの…

太宰治「書簡」(高田英之助あて)

幸福は、そのまま素直に受けたほうが、正しい。幸福を、逃げる必要は、ない。君のいままでの、くるしさ、ぼくには、たいへんよくわかっています。いまだから、朗らかに言えますが、ぼくは、君の懊悩の極点らしい時期に、御坂にひとりいて、君の苦しさ思いや…

太宰治「書簡」(井伏鱒二あて)

幸福は一夜おくれて来る。 おそろしきはおだてに乗らぬ男。飾らぬ女。雨のちまた。私の悪いとこは「現状よりも誇張して悲鳴あげる。」とある人申しました。苦悩高いほど尊いなどまちがいと存じます。私、着飾ることはございましたが、現状の悲惨誇張して、ど…

太宰治「書簡」(山岸外史あて)

「乾杯! 私にもしあわせなときがあったのです。(拍手。)私が一歳のころ。」

太宰治「書簡」(小館善四郎あて)

ぼくは、だんだん、めくらのふりをしているのに、君は、だんだん、目をひらく。「君、自身を愛したまえ。」問題は、それから。 千人のうち、九百九十九人の一致したる言を信ぜず、あとの、みすぼらしい、ひとりの男の言を信ずる。

太宰治「書簡」(小館善四郎あて)

純粋のかなしみをかなしみたまえ。 (中略) ぼくたちのかなしみを笑うひとは、殺す。取り乱したまま投函。

太宰治「書簡」(酒井真人あて)

せいせい、るてん。水の流れだ。人の意志では、どうにも、うごかぬものが、この世の中にあるのだ。袖すり合うも他生の縁ということばがある。私は、あなたにかなしい縁を感じている。 「生まれて来たのが、すでにまちがいのもとであった。」 私、この二、三…

太宰治「書簡」(神戸雄一あて)

必ず必ず、何かの形式で報いる。「そんなことは俗なことだ」と言うひとがあるなら、私は答えます。 「ほんとうの芸術家というものは、野卑な姿を執らざるをえないとき、その本然の美しさを発するものだ。」と。

太宰治「書簡」(小館善四郎あて)

このごろ、どうしているか。不滅の芸術家であるという誇りを、いつも忘れてはいけない。ただ頭を高くしろという意味でない。死ぬほど勉強しろということである。and then ひとの侮辱を一寸(イッスン)もゆるしてはいけない。自分に一寸五分の力があるなら、そ…

太宰治「書簡」(中村貞次郎あて)

「運がわるい」ということは、言いうる。たしかに私たちは、運がわるかった。神は何ひとつ私たちに手伝ってくれなかった。けれども、考えてみれば、私たちは、この世の中を誤算していた。甘く見くびっていた。今になって、あたりを見まわすと、眼前の事実は…