石川元『隠蔽された障害 マンガ家・山田花子と非言語性LD』

 一般に、話し手の言うことが全部相手に伝わるのではない。メッセージの移動に際して必ず途中で脱落するものがある。そのため、少しは消えても意味の伝達に支障のないようにするための防禦体制が必要なことから「冗長」の存在価値がある。伝達の場により数も変わる。気心の知れた間柄とか、悠然とした雰囲気では途中の消耗が少なく省略が多くなるので、表現の冗長性は低く、逆に、伝達を妨げる物理的・心理的要因が多いと高い。ちなみに、「低い」と「高い」を外山滋比古(『俳句的』みすず書房、一九九八)は、それぞれ「椅子の足が三本で済む」と「椅子の足が五、六本で中には床から遊離した足(冗長)が含まれる」とで見事に表現している。