布施豊正『自殺と文化』

そして、日本語に「コミュニケーション」に相当する言葉がない、という事実は重要である。日本人は以心伝心という無言のコミュニケーションに依存しすぎるため、言葉によるコミュニケーションの発達は遅れてきた。「死をもってお詫びする」という自殺が日本人には意外に多いが、言葉によるコミュニケーションが下手で、そういう訓練を殆んど受けていない日本人は往々にして、「死」という極端な形でコミュニケーションをしようとする。言葉による詫びのできない人間は、自殺によって「死んでお詫び」をしようとする。

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