パヴェーゼ『月とかがり火』(米川良夫 訳)

「そうとも、そうとも、若い衆、そうとも、そうとも、娘さんたち……大人になることを考えなさい……わしらの祖父(じい)さんたちはこう言ってたよ……あんたがたの番になったら、わかることだろうて」そのころには、大人になるとはどういうことか想像もできなかった。ただ、むずかしいことをするだけだと考えていた――牛の番(つがい)を買うとか、ぶどうの値段をきめるとか、脱穀機を運転するとかいうような。大人になるということが、行ってしまうこと、年老いること、人の死を目にすること、今のようなすがたのモーラに再会することだとは知らなかった。