2015-02-07 高村光太郎「「ブランデンブルグ」」 孫引き引用 岩手の山山に秋の日がくれかかる。 完全無缺な天上的な うらうらとした一八〇度の黄道に 底の知れない時間の累積。 純粋無雑な太陽が バツハのやうに展開した (中略) おれは自己流謫のこの山に根を張つて おれの錬金術を究尽する。 おれは半文明の都会と手を切つて この辺陬を太極とする。 (中略) バツハは面倒くさい岐路(えだみち)を持たず、 なんでも食つて丈夫ででかく、 今日の秋の日のやうなまんまんたる 天然力の理法に応へて その「ブランデンブルグ」をぞくぞく書いた。 バツハの蒼の立ちこめる 岩手の山山がとつぷりくれた。 おれはこれから稗飯だ。