ニーチェ『善悪の彼岸』

 最も偉大な出来事と思想――とはいえ最も偉大な思想こそ最も偉大な出来事なのだが――は、最も遅く理解される。同じ時代に生きる人々は、そうした出来事を体験することがない、――彼らはそのかたわらを素通りして生きていく。そこでは星の世界と同じようなことが起こる。最も遠い星の光は、最も遅く人間のもとに届く。そしてその光が届かぬうちは、人間は否定するのだ、かなたに――星が存在することを。

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