ニーチェ『曙光』

 妊娠の状態よりも厳粛な状態があるだろうか? そこでは、なされる一切の行動が、私たちの内部で生長しつつある存在にとって何らかの意味でプラスになるはずだという、ひそかな信念のもとになされる! 想像するだにうっとりするその存在の神秘的な価値をいっそう高めるはずだという、ひそかな信念のもとになされる! そして私たちは、厳しく自分を強制するまでもなく多くのことを避けるのだ! そこでは激しい言葉は抑制され、宥和的に握手の手が差し出される。要するに子供には、最も穏やかな最善の状態から生まれてきてもらいたいのである。[……]こうした厳粛さのなかで人は生きるべきだ! 生きることができるのだ! そして生まれてきそうなものが思想であれ行為であれ――すべて本質的な成就に対しては、私たちは妊娠という関係以外の関係を持てない。

   ※太字は出典では傍点