ニーチェ『さまざまな意見と箴言』

 他人に加えた自分の不正は、自分に加えられた他人の不正よりもはるかに耐えがたい。[……]それゆえ私たちは、宗教や道徳が命じる一切のことは度外視しても、自分の内面的幸福のためにだけでも、すなわち自分の心地よい気分を失わないためにだけでも、不正をこうむることに対してよりも自分が不正を行なうことに対して、はるかに用心すべきだろう。というのも、不正をこうむった場合には、良心の汚れなさとか、復讐への希望とか、公正な人たちから、それどころか社会全体から同情され喝采されることへの希望とかの慰めが得られるからである。