ウェルギリウス『アエネーイス』(泉井久之助 訳)

 あたかもその日この城の、王エウアンデルは偉大なる、
ヘルクレースと神々の、ために祭儀を例のよう、
都の前の林中に、執り行なってこの父と、
共に子息のパラスも、同時に若い人たちの、
重立つものも少数の、元老たちももろともに、
香烟ささげ屠られた、犠牲のいまだあたたかい、
血潮と煙を祭壇に、捧げていたがこの時に、
聳える二隻の大船が、蔭濃い森分け近づいて、
音なく櫂をあやつるを、見るなり彼らは突然の、
この出現に怯(お)じおそれ、饗宴棄てて立ちあがる。