有吉佐和子『華岡青洲の妻』

 だが患者が多くても、飢饉の最中に治療費を払うことのできる者は僅かしかいない。医家の入口は栄えても、奥向は困窮する一方であった。雲平は薬を惜しむことはしなかった。値上りしている薬草をふんだんに使って薬湯を煎じ、膏を練り上げて、病人には気前よく与えていた。