ロレンス・スターン『紳士トリストラム・シャンディの生涯と意見』

    第十章


 階段を降りる間の出来事に二章もかけるなんてみっともなくはないか? 第一、ようやく最初の踊り場にさしかかったばかりで、下に着くまでにはまだ十五段もあるのだ。それに、どうやらうちの親父とトウビー叔父が黙っていられないらしく、そうなると階段の数ほど章が必要になるかもしれない――仕方がない、運命だと思って諦めますか――突然の衝動に襲われたぞ――カーテンを閉めるんだ、シャンディ――閉めた――紙面のここのところに線を引くんだ、トリストラム――引いた――ほら、新しい章のでき上がり。


 この件に関して他に従うべき規則があるだろうか――あったとしても――どうせ規則なんか屁とも思っていないのだから――よじって、破いて、それでもって暖炉に投げ込んでおしまい――今は暖かいかって? ええ、もちろん、それにはちゃんとわけがある――こりゃ結構な話だ! 人間が規則に従うか――規則が人間に従うか。