アーネスト・ヘミングウェイ「異国にて」

 秋のあいだ戦争はずっと続いていたが、我々はもうそこへ行かなかった。秋のミラノは寒く、暗くなるのもひどく早かった。やがて電灯がともると、ウィンドウをのぞきながら街を歩くのは気持ちがよかった。店の外には猟の獲物がたくさんぶら下がり、雪が狐の毛皮に降りかかって、風が尻尾に吹きつけた。鹿は重くこわばった空っぽの身でぶら下がり、小鳥たちは風のなかを飛んで、風がその羽を逆立てた。寒い秋で、風が山脈から吹き降りてきた。
 我々はみな毎日午後に病院にいた。黄昏どきに町を横切って病院へ行く道はいくつかあった。そのうち二つは運河沿いだったが、遠回りだった。だがどう行くにしても、最後は運河にかかった橋を渡って病院に入っていった。橋の選択肢は三つ。そのうちの一つには焼き栗を売っている女がいた。炭火の前に立つと暖かく、そのあともポケットに入れた栗が暖かかった。病院はとても古く、とても美しく、門から入って中庭を抜けてさらに向こう側の門を通って入る。たいていは中庭で葬式の行列が出発するところだった。古い病院の向こうには煉瓦造りの新病棟があって、我々は毎日午後にそこで顔を合わせ、たがいにきわめて礼儀正しくふるまい、相手の病状に興味を示し、効果抜群という触れこみの機械に座るのだった。