清少納言『枕草子』

なげの言葉なれど、せちに心に深く入らねど、いとほしきことをば「いとほし」とも、あはれなるをば「げにいかに思ふらん」など言ひけるを伝へて聞きたるは、さし向ひて言ふよりもうれし。


*たいした言葉ではないが、また真実心にしみることがなくても、気の毒なことを「お気の毒に」とも言い、悲しいことを「ほんとうにどんなにつらいでしょう」などとも言ったことを人づてに聞いた時は、面と向かって言われるよりうれしい。