バルガス=リョサ『緑の家』(木村榮一 訳)

「あんたの地図をふたりで燃やしたことがあったろう、憶えているかね……」とアキリーノが尋ねた。「あんなものはくその役にも立ちゃあしない。地図を作った連中はこのアマゾン地方が片時もじっとしていない、燃える女みたいなものだってことが分かっていないんだ。ここでは、川も木も生き物もすべてその姿を変えてゆく。わしたちが住んでいるのは狂った大地なんだよ、フシーア」