小林多喜二『一九二八・三・一五』

自分達は次に来る者達の「踏台(ふみだい)」になって、さらし首にならなければならないかも知れない。蟻の大軍が移住をする時、前方に渡らなければならない河があると、先頭の方の蟻がドシドシ川に入って、重なり合って溺死し、後から来る者をその自分達の屍を橋に渡してやる、ということを聞いた事があった。その先頭の蟻こそ自分達でなければならない。