ロバート・A・ハインライン『夏への扉』(福島正実 訳)

「それはそうだけどね……しかし、きみの可愛がりかたは、犬の可愛がりかたで、猫のじゃなかったんだよ。猫の場合はたたいたりしちゃ絶対だめだ。撫でてやらなきゃいけないんだよ。それに猫の爪の届く範囲で、急激な動作をしてもいけない――つまり、こっちがこれからなにをするかを、猫に理解するチャンスをまず与えてやらなくちゃいけないんだ。しかも、猫がこっちの愛撫を望んでいるかどうかが問題だ。望んでもいない愛撫を与えようとすると、つまりそれは、いささか礼儀にはずれたことになる。猫はとても礼儀を重んずる動物だからね」