ジョーゼフ・ヘラー『キャッチ=22』(飛田茂雄 訳)

どちらを向いても目につくのは狂った人間ばかり。それほどの狂気のなかで彼自身のように正気な青年がなし得ることといえば、せいぜい自己のまともなものの見かたを保つことぐらいであった。しかもそうすることは彼にとって緊急の大事であった。なぜなら、彼は自己の生命が危険にさらされていることを知っていたからである。