高見順『胸より胸に』

何故(なぜ)こんなところにいなくてはならないのだろうと思いながら、私は常にそう思わせられる場所に――人生のそうした場所に私はずっと坐りつづけてきた。こんな筈ではない、こんな所にいる筈ではないと思いながら、いつもきまってそうした場所に、居心地が悪い浮かぬ面持で坐っている自分を見出さねばならなかった。