J.D.サリンジャー「テディ」(野崎孝 訳)

「人はみんな物には必ずどこかにおしまいがあると思ってるけど、それはそう思ってるだけで、本当は違うんだ。ピート教授に分らせようとしたのもそのことなんだけどね」彼は片方の腰を浮かせて、薄黒くなったのを丸めたなんとも見るに堪えないハンケチを取り出すと、鼻をかんだ。「物がどこかでおしまいになるように見えるわけは、ほとんどの人がそういう物の見方しか知らないからなんだ。しかし、だからといって本当に物がそこでおしまいになることにはならない」