J・D・サリンジャー「フラニー」(野崎孝 訳)

その口調がまた、ほとんど例外なしに、学生らしい独断的な物言いである。やかましい論争の的になっている問題でも論じ合ってるみたいで、過去何百年もの間、学外の無学者どもが、あるいは派手に、あるいは地味に、空しい論議を重ねるばかりだった問題を、自分がきれいに解明してやるといった調子で、それぞれが声変わりのした声を張り上げている。