スピノザ『国家論』(畠中尚志 訳)

私が国家学に心を傾けた時に、私は何か新しい事柄、未聞の事柄を説こうとしたのではなく、ただ実践と最もよく調和する事柄を確実かつ疑いえない理論によって証明し、あるいはそれを人間的本性の状態そのものから導き出そうと意図したのであった。そしてこの学問に関することどもを、数学を取り扱うのと同様の捉われない精神をもって探究するために、私は人間の諸行動を笑わず、歎かず、呪詛もせず、ただ理解することにひたすら努めた。