パスカル『パンセ』(由木康 訳)

人間は自然の中にあって何者であるか? 無限に比すれば虚無、虚無に比すれば一切、無と一切との中間物。両極を理解するには、それらから無限に隔っているので、事物の窮極とその始原とは、彼にとって、底知れぬ秘密のうちに詮方(せんかた)もなく隠されている。彼の引き出された虚無をも、彼の呑みこまれる無限をも、ひとしく彼は見ることができない。