アダム・スミス『国富論』(水田洋 監訳、杉山忠平 訳)

たしかに彼は、一般に公共の利益を推進しようと意図してもいないし、どれほど推進しているかを知っているわけでもない。……ただ彼自身の儲けだけを意図しているのである。そして彼はこのばあいにも、他の多くのばあいと同様に、見えない手に導かれて、彼の意図のなかにまったくなかった目的を推進するようになるのである。またそれが彼の意図のなかにまったくなかったということは、かならずしもつねに社会にとってそれだけ悪いわけではない。自分自身の利益を追求することによって、彼はしばしば、実際に社会の利益を推進しようとするばあいよりも効果的に、それを推進する。