棟方志功『板極道』

「ようし、日本のゴッホになる」「ヨーシ、ゴッホになる」――その頃のわたくしは油絵ということとゴッホということを、いっしょくたに考えていたようです。わたくしは、何としてもゴッホになりたいと思いました。プルッシャンブルーで描かれたゴッホのひまわり、ぐるぐるして目の廻るような、輝きつづく、あんなひまわりの絵が描きたかったのです。わたくしは描きに描きました。指で描いたり筆で描いたり、チューブのまま絵具を三本も四本もしぼり出しながら、蛇がのたうちまわるように描きました。何もかもわからず、やたら滅法に描いたのでした。