岡本太郎「思想とアクション」

いつも読書しながら、一種の絶望感をおぼえる。確かに面白い。対決もある。だが眼と頭だけの格闘はやはり空しい。人生はまたたく間もないほど短いのである。ハイデッガーヤスパースサルトルにしても、実存を説きながら、なんであのようにながながと証明しなければならないのか。その間に絶対の時間が失われてしまう。サルトルに言ったことがある。「あなたの説には共感するが、あのびっしりと息もつまるほど組み込まれた活字のボリューム。あれを読んでいる間、いったい人は実存しているだろうか。」彼は奇妙な顔をして私を見かえした。
私はいま生きているこの瞬間、全空間に向って、八方に精神と肉体をとび散らしたい。