フィリパ・ピアス『トムは真夜中の庭で』(高杉一郎 訳)

「おばあさんがここへきて住むようになってから、ときどき時間のなかをあともどりしたでしょう?」
「時間のなかをあともどりした?」
「つまり、過去――むかしへあともどりしたでしょう?」
「トム。あんたがわたしぐらいの年になればね、むかしのなかに生きるようになるものさ。むかしを思いだし、むかしの夢をみてね。」
トムはうなずいた。庭園では、なぜいつもあんなにいい天気ばかりつづいたのか、「時間」がときどきずっとさきの方へすっとんでいったかと思うと、またあとへもどったりしたのか、それでわかった。おばあさんが夢のなかでどの時期をえらんだかということに関係があったのだ。