寺山修司『幻想図書館』

 文字(意味)を消すことによって、自らをすり減らし、やがて自身も消えていってしまう消しゴムには、ひとごとならぬ親しみを覚えたのだ。私は、世界各地の消しゴムを蒐集したが、それらは「蒐集箱」に入っている限りは、ただのゴムであって「消しゴム」ではなく、「消しゴム」として機能しはじめたときには、自らを消失してしまうという不条理をかかえているのだった。