トクヴィル『アメリカのデモクラシー』(松本礼二 訳)

 一国の人民がどんなに努力しても、その中で境遇を完全に平等にするには至らぬであろう。そして、仮に不幸にもこの絶対的で完全な平等に達したとしても、なお知力の不平等は残り、これは直接神に由来するだけに、つねに法の規制の外に出るだろう。
 一国の人民の社会状態と政治の基本構造がどれほど民主的であろうとも、市民の誰もが自分の負ける相手を身辺にいつも何人か見出すと考えねばならず、彼は執拗にこの点に目を向けるだろうと予想される。不平等が社会の共通の法であるとき、最大の不平等も人の目に入らない。すべてがほぼ平準化するとき、最小の不平等に人は傷つく。平等が大きくなればなるほど、常に、平等の欲求が一層飽くことなき欲求になるのはこのためである。