蓮實重彦『反=日本語論』

かりにそんなものがあっての話だが、現在のわが国には、正しく美しい日本語を、書き読み、話す機会を病理学的に、文化的に、政治的に奪われた人びとが少なからずいる。正しく美しい日本語を標榜する者たちは、彼らが口にしたり口にできなかったりする日本語を、他人に迷惑になり法律にも違犯しているストは認められないというのと全く同じ論法で排斥していることになるのだ。

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