エルランド・ヨセフソン「私はすぐに引き受けた」(井上徹 訳)(アネッタ・ミハイロヴナ・サンドレル 編、沼野充義 監修『タルコフスキーの世界』所収)

ベルイマン監督の場合には、普通の俳優的伝統にのっとった演技――すなわち、登場人物について、その性質や本質についてできるだけ多く語り、映画を見た観客が最大限の情報を得るような演技をしなければならないのですが、一方、タルコフスキー監督にとっていちばん肝心なのは、登場人物に何らかの秘密が保たれることなのです。「人間は秘密に満ちている」と彼は言っていました。俳優が演じる人物がもつ思考や感情をどうも理解しきれないという感じを観客に残すようにするというのは、俳優にとって難しいことです。タルコフスキーは、出演者が完全にむき出しにならないように気をつけていました。私は生まれてこのかた、観客にこれほど積極性を求めようとする監督にはまだ会ったことがありません。